俺は市丸隊長に言われた通り、一旦自宅へ帰った後真っ直ぐ洗面台へ向かい水を全開に出して顔に冷たい水を何度もぶつける。
蛇口を閉め、洗面台の縁に濡れた手を置いてぽたりぽたりとたれ落ちる滴を見つめ、俺は濡れた顔を手短にあった手拭いで拭うと手拭いを首にかけ、縁側に座る。
藍染隊長が磔にされた状態で殺された情景が頭から離れられない。それどころか、その情景こそが脳裏に張り付いてて中々忘れようとはしない。
矢っ張り、市丸隊長の通り、此処は寝て忘れるしかないのか…そう諦めかけたときだった。
ひらり、と空から地獄蝶が舞い降りてきた。緩慢と降りてくる蝶の前に人差し指を差し出す。蝶は人差し指にそっと乗り、羽を休める。
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昨日のことが起きたためか、今朝は一護と恋次の安否が気になってしまいあまり良い睡眠を得ることが出来なかった。
けどこのまま二度寝をしたら紅か冬獅郎がたたき起こすに違いないと予感し、早々と寝巻き用に着ている白い着物から死覇装に着替え斬魄刀を腰に提げると、昨日あの二人が剣を交えたところ――ルキアの監禁場所の入り口へ向かった。
今でも未だ憶えている…明瞭(はっきり)と脳の片隅にこびりつくぐらいに残っている、たった一つの小さな記憶の欠片。それはほんの些細な記憶であり乍らも今でもその欠片が脳の片隅でひっそりと佇んでいる。
何時忘れても可笑しくはないほんの小さな記憶なのに、それが今の…いや昔の俺にとってはとても良い思い出なのかもしれない。
その思い出を契機に俺は今の人生を思い切り動かしたに違いない、あの時自分が発したあの発言がなければきっと今の自分は此処にはいなかった…いや、存在していなかった。
あの約束の一言が今の自分になったのだ。
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ 破道の三十一『赤火砲』!!」
掌から紅い火の玉が発射される。が、火の玉は的から反れ、近くの木に当たり燃やし尽くす。それを見た俺はガクッと肩を竦める。
その様子を一部始終を見ていた恋次が、相変わらずその鬼道には慣れねえか、と言った。
高く打ち上げられた花火の合図を見た一護が即座に、一緒に廷内に乗り込んだ仲間・岩鷲のものだと分かり、俺の手首を掴んで打ち上げられた場所へ向かうと其処にいたのは、がっちりとした体格をした花火師の姿である。
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